先日、水窪の小松屋製菓さんの栃餅などに使われる栃の実の加工の様子を取材させていただきました。
栃の実は9月頃から収穫期を迎えますが、秋は栗の加工が忙しいため、採取した栃の実は一旦乾燥させて冬まで保管しておくそうです。
栃の実の加工はおおまかに
①皮むき→②沢水にさらす→③灰汁を入れて寝かせる
という流れで行われます。
<① 皮むき>
乾燥させた栃の実を沸騰しない程度に茹でて一日置き、直前にもう一度茹でて、温かい状態で皮をむきます。皮むき器は地域の事業者に頼んで作ってもらった試行錯誤の賜物です。皮をむくのはコツが必要で、慣れていても1日に10㎏をむくのがやっとなのだそうです。
<② 沢水にさらす>
栃の実はサポニン、アロインなどの成分が非常に多く含まれていて、これらの成分を抜くために、②③の作業を行う必要があります。皮をむいた実を沢水に2週間以上さらします。わざわざ沢水を引いているのは、温度を低く保ち栃の実が傷んでしまうのを防ぐためです。水にさらすと大量の泡が出てくるので、アクが抜けているのが実感できます。以前、地域の方に「この泡を昔はシャンプーとして使った」と聞いたことがあります。
<③ 灰汁を入れて寝かせる>
沢水にさらした後は、灰汁と一緒にさらに寝かせます。指でつまんでつぶれるくらいが食材として使える状態だそうです。灰はナラ・カシなどの硬めの広葉樹のものをもっぱら使うそうです。ただでさえ広葉樹が少なくないのに、最近ではナラ枯れも加速していて、今後一層入手が難しくなることが予想されます。
店主の小松さんが、おっしゃった
「栃の実は採る場所によっても味が違ってくる。それらの味を調整することは難しいが、それも自然のものを使っているからこそ。手間はかかるけど、地域でずっと親しまれてきたものだし、どこでもできることではないので、ここでやる意味はあると思っている。」
「栃の実はなるまでに50年以上も時間がかかる。自分が子供の頃に植えた栃の木もまだ実がならない。そういう気の長い仕事。」
という趣旨の言葉がとても印象に残りました。
小松さんの言葉にもあるとおり、栃を植栽して採取することは難しく、山に自生している栃の木を大切に利用していく必要があります。それを象徴するように、水窪では「栃を伐る馬鹿、植える馬鹿」という慣用句が今なお残っています。自然と関わりの深い気の長い仕事という意味で、林業とも似た精神を感じました。
貴重な文化と技術ですので、また差し支えない範囲で記事や資料として残させていただけたらと思います。
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2月18~20日にかけてイオン浜松西店(入野)で小松屋製菓さんの出張販売を行うそうです。近くにお越しの際は是非。
https://5028seika.com/
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