2月11日の夜、西浦田楽の準備のひとつである稗酒の仕込みが西浦所能の別当宅で行われました。
西浦田楽は水窪の西浦地区に伝わる世襲制のおまつりで、旧暦の1月18日(今の暦だと今年は2月18日)に夜通し行われます。当日の舞は今年も行うことができず、神事のみを執り行うそうです。祭りの準備は旧暦1月7日(今年は2月7日)から始まり、西浦地区の方々はそれぞれの役割をもって準備にあたります。
旧暦1月11日(今年は2月11日)はその準備のひとつである、稗酒の仕込みを行います。昔は稗で作ったそうですが、今は米で作ります。稗酒を仕込む桶は、かつては別当の死後、別当自身の棺桶になりました。今は火葬をするのでそのようなことはしませんが、別当の代替わりの際には今でも桶を新調するそうです。
稗酒作りの工程は思った以上にシンプルでした。釜で沸かしたお湯に米を入れ40分ほど休むことなく交代でかき混ぜ、米がつぶれてとろみがついたら火を止めて桶に移し、麹を入れて寝かせます。寝かせた酒は16日の「口明け」の日に能衆に振舞われます。酒の出来がその年の作物の出来を占ったそうで、甘いと豊作になると言われています。
30年以上前の西浦田楽の当日の舞の様子を収めたビデオも見させていただいたのですが、厳粛なまつりであることはもちろんのこと、笑い声を上げて子供も含めた地域の人の輪の中で楽しそうにまつりを執り行っているような部分もあって、想像とは少し違ったものでした。
このような伝統のある厳かなまつりの準備段階の様子を取材させていただいて良いものかと最初は少し不安に思っていたのですが、別当から「見せられる部分は色んな人に見てもらいたいし、知ってもらった方がいいと思っている」という言葉をいただいて、ありがたく思いました。
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